近年、トレーディングにおける執行アルゴリズムはもはや武器と呼べるほどに重要なものとなっている。
その武器の力を最大限に発揮して戦うようなシステムはHigh Frequency Trading(以下:HFT 訳:高頻度取引)と呼ばれるものになる。
しかし、実際には自動執行の世界ではHFTよりも大規模な注文執行や幅広い銘柄への分散執行に使われるアルゴリズムの方が圧倒的にシェアは多い。
そのような背景の中、効率的な執行を求めて非常に熾烈な争いが繰り広げられている。
ちなみにプロでトレーディングを行っている方は、世の中の人がズルいと言って諦めてしまうとこを同じ武器を持って対抗しようとする方が多いように思われる。(これは私の周りのトレーディングビジネスを行っている方々の印象です)
そのような実情に伴い、私のところにも度々アルゴリズムの実装やストラテジーの設計について依頼が来るのだが、最近は特にシステマティックにはトレーディングを行っていない方からのお声が掛かることが多く感じる。
その中で、仮にAというとこからこういったアルゴリズムを開発して欲しいという依頼があったので、それを開発することにした。出来たシステムは大変喜ばれて利用されるようになった。
それから、仮にBというとこから一緒にマーケットを見て欲しいという事で、ある銘柄の注文パターンを監視することになった際、「この注文の動きについてどう思うか」と尋ねられた。
その執行パターンはまさに私が作ったものだった。しかし、守秘契約を行っているので私の作ったものですとは言えず、「どうでしょうね?推定されている通り、アルゴリズムではあると思います」と答えたが、すかさずこの執行と同じようなアルゴリズムを作れるかと問われた。
正直、動きを見ればパラメータが想像出来る程だった。それはそうだ自分で作ったのだから。しかし同様のものを作ればアルゴリズムが競合するのは目に見えていた。
「同じようなものは作れますが、競合する可能性が高いのでオススメできません」と言うしかなかった。しかし、彼は「奴らがこれを行っている以上、総取りはさせられない。こちらも同じアルゴリズムを持っているということを見せつけなければならない」と彼は言った。
「同じアルゴリズムを作っても、すぐに対策を打ってきて、また機能しなくなると思います。そして開発費は高騰して行くばかりだと思います」と、思った事を言ったのだが、思いもよらない答えが返ってきた。彼は「それでも構わない。どちらが引くかまで続くのだよ。まさに軍拡競争なのだ」と。
そもそも私がアルゴリズムを他に提供してきたのは、少しでもトレーディングの負担を減らすことが出来たらみんな幸せになるんじゃないかと思ったのがキッカケだった。しかし、そこにあったのは戦争さながらの消耗戦を繰り広げる不毛な世界だった。
正直、開発者という視点から見るとAに作ったアルゴリズムで開発費を貰い、Bに同じアルゴリズムを提供しBからも開発費を貰い、さらに執行戦略のさらなる効率化という事でブラッシュアップしたアルゴリズムをさらなる開発費をBから得て提供し、Aにも対抗アルゴリズムとして、先ほど開発したアルゴリズムをさらなる開発費で提供するという錬金術のような事が実際に起こるのだが、こんな事になるべきではないと本当に心から思う。だが我々は一度手に入れた武器は捨てられないのである。
これはトレーディングの中の話に限らず、今の世界を表現しているのかもしれない。
そうなれば自分はさながらアルゴリズムの武器商人と言ったところであろうか。
…なんて評論チックに書いて見たんですが、実際に不毛なような戦いが行われている現場を目にしてるとなんだかなーって思ってしまいます(´・ω・`)。
せっかくなんでみんながハッピーになれるようなシステムを開発していけるような人になりたいなって、ずっと思ってます♪
最近、有能な経営者の方からに面白いアイデアがあるんだったらやってみなよ!というアドバイスを頂いたので社会的に役立つようなものを開発して行きたいなって気持ちがかなり前向きになっていますので、そっちも出来たら進めていきますね(・∀・)!